大判例

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仙台高等裁判所 昭和25年(う)326号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(理由)

記録によれば、被告人寺島榮太に對する公訴事實は、同被告人は麻藥取扱者でなく其他正當に麻藥の交付を受けたものではないのに拘らず、昭和二三年三月頃被告人菅原の肩書居宅で同被告人に對しその頃不正に所有していた麻藥鹽酸モルヒネ紛末二瓦位を讓渡し以て麻藥を所持授與したものであるというにあり、又被告人菅原光以に對する訴訟事實中には第四の(3)として、同被告人は麻藥取扱者ではなく、其の他正當に麻藥の交付を受けたものでないのに拘らず前記被告人寺島に對する公訴事實の如く同被告人から讓受けて不正に所有していた麻藥鹽酸モルヒネ粉末二瓦位をその頃西置賜郡鮎貝村磯貝淸方で同人に對して讓渡し、以て右麻藥を所持授與したものであるという事實が掲げてある。之等によれば起訴の趣旨としては右被告人寺島の手から出た鹽酸モルヒネ二瓦位といふ麻藥については、被告人寺島から被告人菅原え、被告人菅原から磯貝淸えと二段階の讓渡がなされ、なお各その讓渡の直前若干日時の間同被告人等がそれぞれ不正に所有所持したものであるとしているものであることが明らかである。ところが原判決は、その原判示第三において「被告人寺島同菅原はいずれも麻藥取扱者でないのに、共謀の上、昭和二三年三月頃鹽酸モルヒネ粉末約二瓦を山形縣西置賜郡鮎貝村に於て磯貝淸に授與し」と認定して之を有罪とすると共に、被告人寺島が昭和二三年三月頃鹽酸モルヒネ粉末を約二瓦を不正に所有又は所持したとの點、及び被告人菅原が同年四月頃鹽酸モルヒネ粉末約二瓦位を被告人寺島から讓受けて不正に所有したとの點は犯罪の證明なしとして各無罪の云渡をした外、右控訴事實については何等の判斷を示していない。そこで、右の内原審が被告人寺島の所有又は所持及び被告人菅原の所有を無罪としている點はしばらく別として讓渡に關する右原判示と前記各控訴事實とを對比し、原判示第三の事實の證據として擧示せられている各資料を檢討して考察するのに、控訴事實においては、鹽酸モルヒネ粉末約二瓦位を被告人寺島から同菅原え、菅原から磯貝淸えと二段階の讓渡があつたものとしているのに對し、原判決は、右モルヒネは被告人寺島から同菅原え、菅原から磯貝えと二段階の手交はなされたが、それは被告人寺島と同菅原とが共謀して之を磯貝淸に讓渡(授與)したもの、即ち讓渡としては一段階の行爲があつたに過ぎないと認定したものと認められる。

果して然らば、原審は控訴事實第二と同第四の(3)とを一括し、之を法律上一個の犯罪行爲であると認定したものであるから、その中に控訴事實第二についての判斷を包含していないとはいうことができないが、右判示事實と控訴事實との間には犯罪構成要件たる具體的事實關係において著しく異るものがあるのであつて、訴因としての同一性は之を認めることを得ないものといわざるを得ない。しかるに右各訟訴事實についてその訴因を追加又は變更するの手續がとられた形跡はないのであるから、原審が右のような判決をしたことは違法といわなければならず、かつその違法が判決に影響を及ぼすことは明白である。原判決はこの點に於て破棄を免れず、論旨は理由がある。

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